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FIP 猫伝染性腹膜炎
2024.10.07/ 疾患ブログ

こんにちは、熊谷市の森の樹どうぶつ病院と江南森の樹どうぶつ病院です!

 

今回は猫伝染性腹膜炎FIPについてお話しします。

猫伝染性腹膜炎 (FIP: Feline Infectious Peritonitis) は、猫コロナウイルス(FCoV: Feline Coronavirus)の変異によって発症する致死率の高い感染症です。この病気は、特に若い猫ちゃんや免疫力が低下している猫ちゃんで多く見られます。

1. 原因

FIP の主な原因は、猫コロナウイルス(FCoV)が体内で変異し、病原性の高いFIPウイルスへと変わることです。多くの猫は軽度のコロナウイルス感染(一般的には無症状か、軽い下痢を引き起こす程度)を経験しますが、稀にウイルスが変異し、FIPを引き起こすことがあります。同じコロナウイルスでも変異することで病態が変わるのです。

2. 発症のメカニズム

FIPウイルスは主にマクロファージ(免疫細胞)に感染し、全身へ広がることで強い炎症反応を引き起こします。この炎症が臓器や組織に大きなダメージを与え、腹膜炎や胸膜炎、眼症状、神経症状などを引き起こします。

3. 症状

◻︎発熱 ◻︎食欲不振 ◻︎元気消失 ◻︎体重減少 ◻︎黄疸

<ウェットタイプ>

◻︎腹水 ◻︎胸水

<ドライタイプ>

◻︎肉芽腫の形成 ◻︎リンパ節腫大 ◻︎腎臓や腸管の腫大、変形

<目の炎症>

◻︎ぶどう膜炎 ◻︎虹彩の色調変化

<神経症状>

◻︎ふらつき ◻︎麻痺 ◻痙攣

 

4. 診断方法

FIPの診断は困難で、いくつかの検査結果を総合して診断します。主な検査方法としては以下が挙げられます。

血液検査:貧血や高タンパク血症などの異常を確認。

院内血液検査SAA含む 8140円~

猫コロナウイルスPCR検査 8800円

胸水腹水の検査:FIP特有の滲出液の検出とPCR検査。

超音波検査 5000円  

レントゲン検査  4400円/1放射

貯留液検査 4000円

眼科神経の検査:ぶどう膜炎や神経症状の確認

スリットランプ検査 2200円

神経学的検査 1100円

 

5. 治療法

以前は有効な治療法がないとされていましたが、近年、いくつかの新しい治療薬が開発され、成功事例が増えています。しかし、これらの治療薬はイギリスなどの一部の国でしか認可のとれていないものや、認可のとれていないものもあります。

どのお薬も12週間の治療継続を推奨し、飲み薬や注射薬などがあるので猫ちゃんの状態に合わせて選択していきます。

 

当院では、FIP治療薬としてイギリスで承認を受け 、ISFM(国際猫医学会)にてFIP治療プロトコールが掲載されているBOVA社のGS-44152、レムデシビルを直接輸入し治療を行っています。

https://forum.icatcare.org/blogs/yaiza-gomez-mejias/2021/11/26/isfm-protocol-an-update-on-a-treatment-of-feline-i ISFM BOVA製品を使ったFIP治療プロトコール

画像.png

食欲の有無によって注射薬のレムデシビルを使用し状態が安定したら経口へ変更したり、症状軽度で食欲安定している場合にはGS-441524の経口からスタートなど症状に合わせてお薬を組み合わせます。合計で12週間投与できれば治療完了です。

ドライタイプ、ウェットタイプ、神経症状の有無、体重で薬用量は変化しますので経口投与でも2週間に1回は体重測定と身体検査での来院をお願いしています。

FIPの治療薬にはモヌルピラビルというお薬も注目されています。モヌルピラビルは人医療にてコロナウイルス感染症の治療薬として国内生産されているため安価で入手も比較的容易ですが、国内海外での猫ちゃんのFIP治療としては承認薬ではないこと、症例数が比較的少ないため当院では慎重に導入するかを検討しています。盛んに研究されていますので今後も注目していきたいお薬です。

 

6. 予後

FIP は依然として致死率が高い病気です。しかし近年の医療の進展により、早期に発見し治療を実施できれば寛解する成功例も多数報告がでてきています。当院でも現在8頭の子が治療をし寛解しています(2024年9月現在)。

FIPかも?FIPの治療どうしたらいいの?などございましたら森の樹どうぶつ病院にお気軽にご相談くださいね。