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10月MVP ここちゃん 多形紅斑

※出血を伴う写真の掲載もございます。

2023年10月のMVPは
菅原ここちゃん
トイ・プードル×ミニチュアダックスフント 14歳8ヶ月 避妊した女の子

多形紅斑/中毒性表皮壊死症
表皮にアポトーシスに相当する好酸性変性と壊死を特徴とする疾患でいわゆる薬疹です。

元気食欲低下を主訴に来院され、40.3℃の発熱と口腔内粘膜の発赤、腫脹と軽度歯石の付着を確認し血液検査をさせて頂きました。
結果は炎症マーカーのCRPが19.1mg/dlと高値、肝数値の軽度上昇あり、CBC正常でした。胸部腹部超音波検査では胆泥貯留と左側副腎の7.5mm軽度腫大はあるものの発熱とCRP上昇の主因となる所見は認められませんでした。
検査結果からお散歩前に使用した虫除けスプレー(動物にも使用可能と記載されていた)にアレルギー反応を起こしていると予想しステロイド1mg/kg注射治療と抗生剤投与を開始しました。
発熱が落ち着き食欲も改善したためステロイドを経口投与に切り替えたところ発熱と食欲不振が再燃、口腔内粘膜と口唇の糜爛、舌の偽膜形成、血の混じった流涎、直腸粘膜の発赤と易出血、皮膚の多形紅斑、関節の軽度腫脹を認めました。血液検査ではCRP16.8mg/dl、BUN、Pの上昇を認め緊急入院とし、点滴治療とステロイド2mg/kg注射治療を開始しました。


翌日、全身麻酔下での多形紅斑部の6mm生検パンチでの皮膚組織生検、両側手根関節と右側足根関節関節液検査、食道食道婁チューブの設置、歯石除去を実施しました。
処置前のご様子↓

皮膚組織病理学的検査の結果は多形紅斑/中毒性表皮壊死症で表皮全層および毛包上皮で好酸性変性による壊死が認められたとのことで、薬疹の可能性が高いとの診断でした。関節液検査では粘稠度の低下と好中球が散見され細菌の検出がないことから多発性関節炎が疑われました。
どちらも免疫異常による疾患であるためステロイド1mg/kgとシクロスポリン5mg/kgを開始、スクラルファートと抗生剤も併せて、食道婁チューブから流動食の供給を開始しました。
徐々に発熱、発赤も改善し、食欲も徐々に増し食道婁チューブも設置後6日で抜去し自ら食餌をとりお薬も経口投与できるようになりました。
上昇していたCRP、BUN、Pも正常値へ入りました。
写真:治療開始後6日目のご様子。皮膚の上皮化が認められたのでお顔周りを洗浄とカットさせていただきました!


ここちゃんとご家族の皆さんが入院や通院、投薬を頑張っていただいたおかげで良化傾向を維持できています。
ステロイドは斬減していき、シクロスポリン単独週に2回程度の投薬で管理できるのを目標にこれからも一緒に治療させていただければと思います!