慢性腎臓病について
2024.05.07/
疾患ブログ
こんにちは、熊谷市の森の樹どうぶつ病院と江南森の樹どうぶつ病院です!
今回は慢性腎臓病についてお話ししたいと思います。慢性腎臓病は高齢の猫ちゃんやわんちゃんでもなりうる身近な病気です。腎臓は障害をうけると再生しない臓器なので人医療では透析治療をしますが動物医療ではどのように治療していくのでしょうか?
腎臓が障害を受けその働きの6~7割が失われると、本来であれば尿として排出されるべき老廃物が体内に急激に蓄積し始めます。このように腎臓の機能が低下した状態を腎不全と呼びます。
慢性腎不全は腎臓の働きが徐々に低下した状態で、老齢の動物ほど発生頻度が高くなります。機能が低下した腎臓は治療しても元に戻ることはなく、次第に悪化していきます。
症状として
食欲不振や元気の消失、体重の減少、被毛粗剛、嘔吐、下痢、便秘などの体調不良や下記の特徴的な症状も見られることがあります。
◻︎多飲多尿
尿を濃縮する能力が低下するため多尿となる一方、尿として体から出ていった水分を補給するため水をよく飲むようになります
◻︎尿毒症 〜舌炎
腎臓の働きがさらに低下すると、腎臓から排出されるべき老廃物が体内に蓄積するため(BUN、血中クレアチニン値の上昇)を起こし、尿毒症へと進行します。独特な口臭や、尿毒症は末梢血管を障害することもあり口内炎や舌炎などが引き起こされることもあります。
◻︎腎性貧血 〜呼吸が早い、可視粘膜蒼白
腎臓には赤血球を作るために必要なホルモン(エリスロポエチン)の産生やビタミンDの活性化、血液中の電解質(ナトリウム、カリウム、リンなど)の調節の働きがあります。これらの機能も障害を受けるため、貧血や上皮小体機能亢進症、電解質異常などを生じることがあります。
◻︎腎性高血圧 〜視力低下
腎臓には血圧の調節などの働きがあり、腎不全による高血圧が起こることがあります。症状として眼底出血や網膜剥離などによる視力障害が起こることもあります。
末期になるとけいれんや昏睡がみられます。
治療法としては
症状は次第に悪化するため、できるだけ症状を緩和させ、また腎臓の負担を軽くすることが治療の目的となります。
血液検査や尿検査、血圧測定によりIRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)のガイドラインを参考にステージ分類をし治療方針を決めます。
①食事療法(低タンパク、低リン、低ナトリウム食)
②点滴による脱水補正
③投薬管理(高血圧の治療、リン吸着剤、活性炭)
④貧血に対する増血剤の注射
などを現在出ている症状に応じて、組み合わせて治療します。
早期発見で対応していくのがとても大切な慢性腎臓病です。完治がない病気だからこそ病態を知り、お付き合いしていかなくてはなりません。検査や治療でご不明点がありましたらお気軽にお問い合わせくださいね。